【リアルアーティストライフのススメ】ナポリのスーツ

1年ほど前に僕がフルオーダーしたナポリのスーツが
ついに出来上がった。

ジャケットを創ってくれたフェリーチェ・ビソーネは
ナポリを代表するサルト・フィニート。

漫画「王様の仕立て屋」にも登場する伝説のサルト
と言われるロベルト・コンバッテンテの愛弟子である。

将来、博物館に飾られていてもおかしくない
作品をつくっていると賞賛されるほどの仕事ぶりで、
僕が言うのもおこがましいが、とても美しい。

仕立てそのものも美しいし、
仕事に対する姿勢も美しい。

まさに真の芸術である。

フェリーチェは物心ついた時から
現在まで仕立て職人として生きてきた。

自身では一切、営業活動をせずに朝から晩まで
つくり続ける。

文字通りプロフェッショナルな職人。

特定のパターンの型紙を使用せず、いきなり生地に
フリーハンドで線を引き、裁断、仮縫いとして
仕上げて、顧客にモディファイしていく。

同じことをできる人間はこの世に彼以外存在しないだろう。

スキルも素晴らしいが、特に学ぶべきは
その愚直な姿勢だと僕は思う。

現在、70歳くらいらしいが物心ついた小さな時から、
現在まで、ひたすら仕事をしているのだ。

元々、家が貧しくて仕方なかったのかもしれない。

もしかしたら始めは嫌だったかもしれない。

しかし、彼は愚直に自分の仕事を続けているのだ。

ついつい日本にいるといろいろな誘惑があり、
目移りして、手を伸ばしたくなりがちであるが、
そんなときはフェリーチェの在り方を思い出す。

彼は自分に与えられた仕事を徹底的に追及し、
唯一無二の作品を生み出し続けている。

まさにリアルアーティスト。

ちなみに、サルト・フィニートというのは
「全ての修行を終えた職人」という意味で、
ほんの一握りの職人しか手にすることのできない称号だ。

目安として、徒弟時代も含めて最低でも
40年はかかるということ。

要するに、サルト・フィニートの称号を得るためには、
最低でも40年間、つくり続けなくてはいけないという
かなり狭き門である。
(もちろん評価されなければ称号は得られない)

しかも、ジャケットとパンツでは作業が異なるので、
物理的に両方のサルト・フィニートの称号は得ることができない。

単純に寿命が足りないのだ(ふたつで最低でも80年はかかるので)。

だから、僕がオーダーしたスーツも、
ジャケットはフェリーチェがつくっているが、
パンツはまた別な職人がつくっている。

プロフェッショナルの在り方を体感させてもらい、
アーティストの在り方を考えさせられる。

我々はホンモノに触れてこそ、
リアルアーティストのライフスタイルに
一歩一歩近づいていくのものだ。

ぜひ、みなさんもその道の一流に触れて、
自分だけのリアルアーティストライフを
切り開いていって欲しい。

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2013年4月12日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:RAS

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